今回はこれからトライアスロンに挑戦したいと思っている初心者に向けて、トライアスロン用ウェットスーツの選び方とおすすめのウェットスーツメーカーを紹介したいと思う。
トライアスロン用ウェットスーツには様々なメーカーや種類がある。その中でまず、私が初心者の方におすすめしたい種類は、
「安価なワンピースタイプ」
の購入をおすすめする。注意してもらいたいは、安価でも必ずトライアスロン用のウェットスーツを購入してほしい点だ。ウェットスーツには、サーフィン用やスキューバー用などが存在し、その用途によって作りや特性が異なるのでその点は注意して欲しい。
それでは、私が「安価なワンピースタイプ」をすすメル理由とトライアスロン用ウェットスーツの特徴などを説明していきたい。
ウェットスーツの選び方も重要だが、ウェットスーツを購入するタイミングにも簡単に言及しておく。私もそうであったが、自分が考えている以上にウェットスーツは早く購入した方が良い。通常4月からトライアスロンはシーズンインするが、その時点で人気のウェットスーツは売り切れている場合がある。よって、欲しいウェットスーツのサイズがあるうちに決断した方が良い。
レースでのウェットスーツ着用はほぼ必須
国内レースはウェットスーツ着用を推奨
国内のトライアスロン統括団体であるJTU(日本トライアスロン連合)は、ウェットスーツの着用については下記の通り明記されている。
ウェットスーツは安全のために有効であり、着用を推奨する。
引用:JTU競技規則第72条
よって、国内で開催されるほとんどレースはウェットスーツが推奨されている。また、水温が低い場合は着用義務が発生する。
実体験でも、国内のレースでウェットスーツを着用せずにレースに参加した事はない。これまで参加したレースはJTU主催・公認大会、ローカルの大会と様々なレースに参加したが、全てのレースでウェットスーツを着用した。
逆にスイスで行われた世界選手権に参加した時は、水温が高くウェットスーツ禁止となり、はじめてウェットスーツ無しで泳いだ。
従って、「国内のレースに参加=ウェットスーツ着用」と考えてもらってもよいだろう。
国内レースにおけるウェットスーツ着用基準
JTUの競技規則にはウェットスーツの着用基準も明記されている。
ウェットスーツの着用基準の水温は次のとおりとする。着用必須の場合、胴体を覆ったウェットスーツを着用しなければならない。
引用:JTU競技規則第73条
ウェットスーツ着用基準は「水温」と「環境」で決定
ウェットスーツが着用基準は、水温によるものだ。水温が高い場合のみウェットスーツの着用が禁止されている。ウェットスーツを着用して泳いでみるとわかるが、夏場は、海中でも体温が上昇し熱がこもる。熱中症のリスクが高まるため禁止となっていると推測される。
スイムの距離 | 禁止 | 必須 |
1500m以下 | 22℃以上 | 15.9℃以下 |
1501m以上 | 24.6℃以上 | 15.9℃以下 |
また、波が高いなどの「不安定な環境」により着用義務が発生する場合もある。いずれの場合も競技開始前に告知される。
最終的な判断は主催者
競技規則に準じたその大会特有の「ローカルルール」の設定も可能な為、別途ローカルルールがある場合はそれを遵守する必要がある。そして、最終的な判断は主催者が決定する。
ウェットスーツも用途により様々な種類がある
普段の生活ではまず触れる機会のないウェットスーツ。実は一概にウェットスーツといっても用途により様々な種類があるのだ。
簡単に用途別ウェットスーツの紹介をしていきたいと思う。
トライアスロン用のウェットスーツの特徴
- 浮力が高い
- 泳ぐ為の専用設計がされている
- 脱ぎやすい作りになっている
浮力が高い
トライアスロン用ウェットスーツの最大の目的は、スイム時の事故を防ぐためといってもよい。言い換えると、溺れない為にウェットスーツを着用するのだ。よって他のウェットスーツと比べて浮力が高い作りになっている。
スイム専用設計
ウェットスーツを着用した状態でもスイムの動きを妨げないように設計されている。ストレッチ性が高く、伸縮性の高い素材が使われている。また、メーカーや価格帯にもよるが、動きやすくするために可動域が大きい箇所には素材を薄く、可動域が少ない箇所は素材を厚くし浮力を上げる工夫がされている。そのバランスにより水中での姿を楽に保ち、早く泳ぐ事ができるのだ。
実際、ウェットスーツを着用して泳いだ方が、着用していない時よりタイムが速い場合が多い。特に私のようにスイムが苦手な人ほどウェットスーツの恩恵を受ける場合が高い。逆にスイマーの人の中には、ウェットスーツの着用時だとフォームが崩れタイムが遅くなる人もいる。
脱ぎやすい作りになっている
トライアスロン用ウェットスーツは、スイム終了後バイクに移行時に脱ぐ必要がある。トライアスロンのウェットスーツはそこも考慮されており、素早く脱げるデザインになっている。
スキューバダイビング用のウェットスーツの特徴
- 水圧のある環境下でも潰れにくい素材を使用している
- 耐久性・保温性を重視した作り
- 全体的に生地が厚く動きにくい
サーフィン用のウェットスーツの特徴
- 保温性が重視されている
- 肩周りが動きやすい構造になっている
- 季節に応じて様々な種類がある
トライアスロン用とサーフィン用のウェットスーツの大きな違いは泳ぐ為に設計されているか否かになる。
トライアスロンは泳ぐ必要がある為、ウェットスーツに水を含まない素材になっている。水を含むと抵抗が生まれ泳ぎにくくなる。逆にサーフィン用は保温性を重視する為、裏地に毛先の長い起毛を採用している場合が多い。
トライアスロン用のウェットスーツの種類
トライアスロン用ウェットスーツには種類がある。大きく分けて4種類あるので、用途や特性を理解した上で自分に合ったウェットスーツを選んで欲しい。
種類 | メリット | デメリット | 対象者 |
ワンピースタイプ | ①水中での抵抗が少なく速く泳ぐ事ができる ②種類が豊富で価格帯も様々 | ①着脱がしにくい | スイムが苦手な人、初心者向け |
2ピースタイプ | ①着脱がしやすい ②環境に応じてジャケットが変更できる | ①価格が高い ②種類が少ない | ある程度泳力がある人、予算が豊富な人 |
フルスーツ | ①浮力の恩恵を受けやすい ②水中での抵抗が少ない | ①肩周りの動きが制限される ②着脱がしにくい | スイムが苦手な人、初心者向け、水温が低い場合 |
ロングジョン | ①肩周りが動きやすい ②着脱がしやすい | ①浮力が低下する | ある程度泳力がある人、水温が高い場合 |
ワンピースタイプ
ワンピースタイプは、上下繋がっているタイプでスタンダードなタイプだ。商品のラインナップも豊富で予算に合ったものを選ぶ事ができる。特徴としては、後述する2ピースタイプよりも水中の抵抗が少なく速く泳ぐ事ができる。その反面、着脱しにくいというデメリットもある。着用する時は確実に2ピースタイプより時間がかかるが、脱ぐスピードは練習をすれば2ピースタイプ同等のタイムまで短縮する事ができる為、レースでの支障はほとんど無い。
対象者としては、初心者やスイムが苦手な人としているが、プロトライアスリートも水中の抵抗力を抑えるためワンピースタイプを着用している選手も多い。
2ピースタイプ
上下別れており、ジャケット、パンツで構成されているタイプだ。
着脱のしやすさが最大のメリットだ。暑い日のレース時は、その着やすさから直前までジャケットを着用せずに体力を温存することができる。また、ジャケット、パンツで別れているため水温によってフルスーツ(長袖)・ロングジョン(半袖)とジャケットを使い分ける事も可能だ。ただし、その場合ジャケットを両方購入する必要がある。
2ピースタイプのデメリットとしては、水中の抵抗がワンピースタイプに劣る点と、オーダーメイドになる場合が多く、納期が長く、価格もワンピースタイプと比べて高くなる場合がある点だ。
フルスーツ
上半身、下半身共に長袖・長丈タイプのものになる。
浮力が大きく水の抵抗も減るため速く泳げる可能性が高い。後述するロングジョンよりウェットスーツの生地が多く使われている分、浮力の恩恵を最大限受ける事ができるからだ。
デメリットとしては、肩周りにウェットスーツの生地がある事により、肩周りの可動が制限され、場合によっては肩・腕を動かし辛く疲れやすくなる点だ。
保温性も高い為、水温が低い場合はフルスーツの着用を推奨する。
ロングジョン
上半身半袖・下半身長丈タイプをロングジョンと呼ぶ。
肩周りに生地がない為肩・腕が動かしやすいのが特徴だ。生地が少ない分浮力はフルスーツに比べると劣ってしまう。ロングジョンはスイム上級者や得意な人が着用する傾向がある。浮力より上半身の安定したフォームを優先した方がタイムが早くなるからだろう。
その他のメリットとしては、袖が無い分脱着はフルスーツに比べて簡単な点だ。
トライアスロン用ウェットスーツの種類は、2タイプ(1ピース、2ピース)と2つの仕様(フル、ロングジョン)の組み合わせで4種類になる。
他にもジッパーの位置(前、後)などの種類があるよ。
既製品とオーダーメイドの違い
最後に既製品とオーダーメイドの違いを説明したい。ここまで理解すれば自分に最適なウェットスーツを選ぶ事ができるだろう。
既成品のメリット・デメリット
- 在庫があれば試着する事が出来る
- 在庫があれば即購入する事が出来る
- 様々な価格帯のものが販売されているので予算に応じたものを探す事が出来る
- オーダーメイドと比べると安い場合が多い
在庫があれば試着して即購入できる
既製品は、在庫があれば試着して即購入する事が可能だ。注意して欲しい点としては、既製品でもシーズンが近づくにつれ在庫不足になる事だ。シーズン前に売り切れになるものもある。しかし、在庫さえあればレース直前でも調達が可能だ。
アイテム数、価格帯も豊富
既製品はアイテム数、価格帯も豊富にある。大手メーカーは、必ず複数の価格帯のアイテムを展開しており、商品を展開しているメーカーも豊富で、1万円以下のものから10万円以上するものと様々だ。自分の予算とスペックを考慮し自分のニーズに合ったウェットスーツを購入できるだろう。
- 各メーカーのサイズ展開の中から自分の体型に近いものを選ぶ必要がある
- 在庫が無ければ、在庫が復活するまで待つ必要がある。
(一度在庫が無くなると復活するまで時間がかかる場合が多い。)
メーカーのサイズ展開の中から選ぶ必要がある
既製品の1番のデメリットとしては、当たり前だがメーカーのサイズ展開の中から、自分の体型に近い物を購入することになる点だ。特殊な体型(太ももが極端に太い、型幅が身長に対して広い等)の人はサイズ選びに苦労するかもしれない。
また、海外メーカーのウェットスーツは欧米人の体型でデザイン設計してあるものがあるので日本人体型には合わない場合もある。
しかし、メーカーの中には細かくサイズを展開してあるものもあるので自分に合うサイズを見つけられる事も多くなってきている。
オーダーメイド品のメリット・デメリット
身体のサイズを細かく採寸し、自分の身体にジャストフィットするように制作されるオーダーメイド。既製品では実現出来ないフィット感がオーダーメイドの最大のメリットだ。
- 自分専用の身体にフィットするスーツを着る事が出来る
- サイズを迷う必要が無い
- 泳力に合わせて生地の厚みを設定する事が出来る
自分専用設計
オーダーメイドのため、自分の身体にフィットするウェットスーツを手に入れる事が出来るのは当然だが、更に自分の泳力に応じて使用する生地や生地の厚みを設定する事もできる。
泳力に自信がない人は、浮力の恩恵を最大限受けれるように生地を厚く、泳力がある人はウェットスーツを着ていない時と近いフォームで泳げるようにとオーダーする人の要望に応える事ができる。
私もオーダーメイド品を1着持ってるが、採寸時の計測数の多さに驚いた。
- 納期に時間がかかる
- 既製品と比べて価格が高い
納期に時間がかかる
オーダーメイド品の納期は、メーカーによって異なるが、通常1ヶ月以上はかかると思った方が良い。また、シーズン直前に駆け込み受注が多い場合、納期が大幅に遅れる可能性がある。オーダーメイド品を購入する際は、納期に十分な余裕を持ってオーダーした方が良い。
価格が高い
専用設計の為、当然価格は既製品と比べ高くなってしまう。
最初は安価な既製品が良い
ワンピースタイプのフルスーツを買おう
これからトライアスロンをはじめようと思う初心者の方で、元スイマーでない限りはワンピースタイプのフルスーツを購入することをすすめる。
理由は次の通りだ。
安全最優先
ワンピースタイプのフルスーツはウェットスーツの中で1番浮力の恩恵を受けれるタイプになる。まずは、安全にレースを終える為にも浮力のあるスーツを選んでもらいたい。浮力があれば、万が一溺れそうになっても仰向けでじっとしていれば呼吸はできる。
ロングジョンに比べて多少脱着しにくいが、命に関わる浮力の恩恵に比べれば、無視しても良いデメリットといえる。
豊富なラインナップ
既製品で1番商品ラインナップの多いワンピースタイプのフルスーツ。商品の手に入れやすさや、自分のサイズの在庫を見つけやすさの点からもおすすめだ。
体に合ったサイズを購入しよう
ウェットスーツには様々なサイズがある。今の体に合ったサイズを選んで欲しい。ウェットスーツは命に関わるアイテムのためサイズが合わないものを着用すれば、命の危険にもつながる。
なぜ初心者の人にオーダーメイド品を推奨しないか
予算がある方は最初のウェットスーツにオーダーメイド品も検討されている人もいるかもしれない。それでは、なぜ私がオーダーメイド品を推奨しないか説明していこう。
体型は競技年数と共に変化する
初心者の方にオーダーメイド品をおすすめしない理由は、体型が変わり使えなくなる可能性が高いからだ。オーダーメイド品を購入するということは、現時点の体型のデータを元に制作されることになる。トライアスロンにハマりトレーニングを継続すると、必ず今の体型から変わるだろう。そうなると、そのオーダーメイド品は何の意味もなさない。
初期段階でオーダーメイド品のウェットスーツを買う事は、トライアスロンにハマった場合(サイズが合わなくなる)でも、ハマらなかった場合(既製品より高い)でも不幸な結果を招いてしまうのだ。
自分の体型を把握したらオーダーメイド品へ
何年かトライアスロンを継続し自分のベストな体重・体型が見定まってきたらオーダーメイド品を作成するのは有りだと思う。その頃には、同時に自分の用途に合ったタイプのウェットスーツも選択できるようになるだろう。
安価なウェットスーツで十分
持論だが、はじめてのウェットスーツは安価な既製品で十分だと考えている。ただし、冒頭にも書いた通りトライアスロン用のウェットスーツという点は大前提となる。
体型は必ず変わる
オーダーメイド品をすすめない理由と同じになるが、競技を継続すると体型が変わる可能性が高いからだ。既製品でも安価なものを買わないと、オーダーメイド品との区別がつきにくい。(メリットを感じにくい)
私が初めに買った1着
最近の物価高で当時の価格は参考にならないかもしれないが、私が最初に買った1着は、海外通販で購入したdhp製ワンピースフルスーツで価格は9,800円だった。選んだ理由は、それが1番安いウェットスーツだったからだ。
当時は、トライアスロンを継続する確信がなかったので、1回で辞めても財布のダメージが少ない商品を選んだのを覚えている。
ロードバイクは、トライアスロン辞めても乗れるけど、
ウェットスーツは辞めたら2度と使うことがないだろうから安いの買った方が良いよ!!
安価なウェットスーツの取扱いは、海外通販の方が多い場合がある。初期投資を抑えるために海外通販での購入も検討してみてはいかがだろうか。国内通販と同様に簡単に購入する事が可能だ。
レンタル品はおすすめしない
私自身、ウェットスーツのレンタルサービスを利用した事は無いが、レンタルサービスもあるようだ。しかし、普段の練習や使いたい時に使えないという制約が発生するので私はおすすめしない。練習用のウェットスーツは自前で、決戦用ウェットスーツをレンタルするという使い方が正しいのだろうか….。
しかし、レンタルサービスもあるという事を知っていれば、急に体型が変わったり、レース直前にウェットスーツが壊れたというアクシデント時に役立つかもしれない。
最後に
今回は、初心者の方に向けてウェットスーツの選び方について書いた。
基本的な情報は網羅されていると思うので、それぞれの特性を理解して上で自分のニーズに合ったウェットスーツを選んでみてほしい。そして、トライアスロンを楽しんで趣味にしてもらいえたら嬉しい。